体の調子が悪いときに病院に行くと、よくお医者さんが胸をトントンと叩いたりすることがあります。聴診器を当てるというのではなく、トントンと叩いているのですが、一体何をしているのでしょうか。

●昔からあった打診

もちろんただ単に、遊びたいとか、患者を触りたいとか、トントンしたいからやっているわけではありません。ましてやお医者さんごっこのように、何ちゃてお医者さんのフリをしているわけでもありません。
患者さんの胸をトントンと叩くのはきちんとした診察法で『打診』と呼ばれている方法です。

あれれ、そんな胸をトントンしたぐらいで症状がわかるのかよ!と疑問に思う方もいるかもしれません。

実はこの打診には歴史がありまして、18世紀の半ばごろ、オランダにいたアウエンブルッガー医師が、酒場のおやじが酒樽をたたいて酒の残量を調べているのを見て考えついた診察法だといわれています。それがやがて、内科の診察法として伝えられるようになり、現在でも打診は診察の第一歩とも言われているくらいです。

●熟練した医師がやればスゴ技の診断法

いいかげんに叩いているようですが、実は指だ叩く位置は肺とその上部で、感触ではなくて音を聞くために行っています。
もし健康であるばあいは、肺の内部にはしっかりと空気が入っています。それをトントンと叩くことで空気の具合を聞き取って、以上の有無を判断しています。

本当にそんなトントンするだけで、病気がわかるのでしょうか。それだったら、医者だって苦労しないし、レントゲンを撮ったり血液検査をしなくたっていいじゃないかと思ったりします。
実際のところこの打診というのはどのくらいのものなのでしょうか。

実はトントンと患者の胸を叩くだけの打診ですが、熟練した経験豊富な医師であれば、それだけで肋膜炎や心臓肥大などをすぐに当てることができると言われています。まるで職人技ですね。
工事関係者が、構造物をトントンと叩いただけで、どこにどの程度のガタがきているのかがわかるとよく言いますが、まさにいろいろな経験、いろいろな音やケースを体験して身につけていくものなのかもしれません。

もっともそうはいっても、すべてのお医者さんがそんなに経験豊富な医師ばかりではありませんし、現在は打診はあくまでも目安ということで行われていて、そのあとレントゲンを撮ったり、血液検査などをしてしっかりと診断しています。検査技術がなかったり、しっかりとした診断機器がない時代であればともかく、現在は幸いなことに医療技術が発達し、画像診断や血液検査でいろいろな病気を診断することができます。

 カテゴリ

 タグ