風邪という身近な症状で西洋薬と漢方薬を考えてみると、西洋医学では、風邪に対して解熱鎮痛薬を中心とした風邪薬が用いられます。
風邪の諸症状の緩和を目的として、熱や頭痛があれば解熱鎮痛成分、鼻水が出ていれば抗ヒスタミン剤、咳が出ていれば鎮咳薬、痰がからんでいれば去痰薬を症状に合わせて併用していきます。
市販の風邪薬は、風邪そのものに作用しているのではなく、風邪の諸症状を緩和する対症療法です。

それじゃ病院にいって診察してもらえば、抗生物質がもらえるから、それで風邪の病原菌をやっつけてくれると思うかもしれません。しかし風邪のほとんどは細菌ではなくウイルスが原因になっていますので抗生物質では効果がありません。抗生物質が出るのは、細菌感染の疑いがあったり、肺炎などに発展するのを防ぐためのものであったり、風邪ウイルスを直接目的としたものではありません。

それでは、漢方薬はどうなのかというと、西洋薬とは少し違っています。
市販の風邪薬には葛根湯エキス配合といったように漢方処方エキスを配合したものもあります。
漢方では風邪の初期などで熱がある時は、西洋薬のように解熱鎮痛薬を使って熱を下げるというのではなく、からだを温めて発熱を助けようとする考え方があります。これによって病原菌に対する反応性を高め、発汗が促されることによって、結果熱が下がるということになります。


大学生80人において、風邪の初診時で37℃以上の熱がある人を対象に西洋薬の解熱薬と漢方薬を飲んだところ、漢方薬のほうが熱が早く下がってきたという報告もあります。

漢方薬では「証」により使われる薬が違ってきます。桂枝湯(けいしとう)はどちらかというと虚証の人に用いられます。そしてその桂枝湯に葛根と麻黄を追加した形での処方が葛根湯になるのですが、こちらはどちらかというと実証になります。虚証というと、脈に力がなく緊張が弱く汗ばんでいます。実証は逆に脈の力や緊張が強く汗ばんでいません。

漢方では風邪の初期では症状が体の表面にありますが、病態の進行とともに病巣が体の奥の方に入っていきます。奥の方へ入っていき、ふしぶしの痛み等が出てきたら麻黄湯、肩のこわばり等がでてきていれば葛根湯がよい選択なりますが、ここまでいく前に少し汗ばんでいる程度なら桂枝湯、鼻水が出ていたり、くしゃみや咳き等が気になる場合は小青竜湯がよく効きます。

漢方では体を診て、実証か虚証かを判断して、同じ風邪でも症状や風邪の進行具合によって処方を使い分けていくことになります。

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