東大チームが、10月24日、培養筋肉で指の曲げ伸ばしができたと発表しています。
これで、筋力が低下している筋ジストロフィーやALS(筋萎縮性側索硬化症)の人への筋力アップなどの治療の扉が開かれる可能性がでてきています。
失われた筋肉を補うというようなことが可能になれば、筋肉の再生医療への扉を開くことになります。
さらに開発に携わった竹内教授は、筋肉で自然な動きをするロボットの開発にもつながるとしています。

●培養筋肉開発の発想はロボコップ

竹内教授は、ロボコップやターミネータといったようなSFの世界に興味を持っていて、昆虫ロボットを作るなどの研究をしていましたが、そのうちに昆虫に似せたロボットを作るというのではなく、昆虫そのものを機械で制御してみたらと考えるようになったといいます。

まさに、機械と生体が融合したロボコップやターミネーターの発想です。
そして、それぞれのパーツを人工的に再構成可能であれば、動物の細胞からロボットをつくることができるのではないかと考えるようになったといいます。
その発想からきたのが、細胞を部品のように組み立てるという工学的手法だったようです。

●点と線と面

一つの細胞という”点”から、”線”、さらには”面”、そしてそれを組み立てれば3次元の組織ができるという、おもちゃのブロックみたいな発想だったわけです。

実際に、プレートの上で細胞を培養すると、接着面積を広げようと細胞が伸長していき、数分で引き寄せられていき、折り紙のように立体が組み上がると言います。

普通は、作成した人工的な細胞組織が大きくなれば、血管がないので栄養が細胞に届かず死んでしまいます。
ところが、竹内教授は、直径約0.1mmのビーズ状の入れ物に詰め、細胞ビーズという規格化された細胞を作ることに成功し、それを詰め込んで培養しています。
そうすると、ビーズの隙間から栄養分が浸透して、指を模した約3.5cmくらいの細胞でも24時間以上生存できたといいます。

さらに細胞を生きたまま髪の毛くらいの細い線にすることにも成功し、これによって心筋細胞を使い脈打つように伸縮をさせたり、神経細胞を使い実際に神経シグナルを伝達させたりすることが可能になっています。神経細胞、筋肉細胞、血管の内側を覆う内皮細胞などで線をつくることに成功しているレベルまできていて、後はいかに機能を持たせていくかというところが重要な課題になっています。

●期待される、病気治療への扉

培養筋肉の研究では、ラットの筋肉細胞を使って行われています。筋肉細胞を取り出し、ゼリー状のシートに入れ、そのシートを何層にも重ねて培養し筋肉組織をつくります。
これを人工関節の両側に取り付け、電気刺激で片方ずつ交互に縮ませると、スムーズに曲げ伸ばしができたといいます。

実験は、長さ約8mm厚さ約1.5mmの筋肉組織を長さ2cmの人工関節の両側に取り付けていて、まさに指の曲げ伸ばしをモデル化したいるような感じのものです。
これに神経細胞も作ることができれば、まさに指のように操れるようになります。

今後治療が難しい病気への活用が進めば、病気への考え方も変わってくるかもしれません。

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