脳は死ぬまで成長続けるのでしょうか。通常は、脳の成長というと、幼児の脳がどんどん成長していって大人になっていくイメージがあります。
脳は変化しやすい器官で、目の前の問題を効率的に処理するために、常に脳回路を動かして変化し続けているのです。こうした脳回路の変化を「成長」と呼ぶのであれば、たしかに「脳は死ぬまで成長し続けている」と言って差し支えないということになります。

わかりやすいように脳回路を一般の道路網だと考えると良いでしょう。
あなたが、学校や会社や取引先へ行くのに、毎日ずっと決められたコースをルーチンに通っていたとします。ところがそこに新しい「抜け道」ができたと考えます。
そうすると人々は、きっとその「抜け道」をどんどん利用するようになります。通りやすい、混雑していに、時間の短縮になるということであれば、その抜け道は頻繁に使われ、「抜け道」の交通量は増えていくことになります。
すると、最初は交通量がそれほどでもない目立たない抜け道であったにすぎなかったのが、繰り返し使われ通っているうちに交通量が増え、発展してきます。そして、やがて幹線道路のような重要な道路へと成長していきます。
この一連の経過が、脳回路の成長と呼ばれています。

では、脳回路にこの抜け道とやらができるのは、どんなときでしょうか。
よく脳科学者の茂木先生がアハッ!体験とか言っていますが、それに近いものがあります。「そうか! こうすればよかったんだ」というような知恵や知識や経験を得たときに、この抜け道ができてきます。そしてそれは、私たちの脳の中で問題解決に行き着く新しい「道筋」が見つかったようなものとして認識されます。

いったんその抜け道を見つけてしまうと、それ以降同様の問題にぶつかるたびにその「道」を通るようになるといったこともあります。そうやって「回路」が太くたくましく成長していくわけです。
これは、ヒトの性格にもよるのので、個人差があります。
例えば、同じ場所に行くときでも、いつもどおりこの道というよりも、もっと良い道はないか、便利な道はないかと、いろいろとルートを変えるような人は、それだけ抜け道を見つける可能性が高くなります。
いつも新しい知識や経験を貪欲に得ようとしている人は、新しい「抜け道」ができやすく、自分に降りかかってくる課題や問題に対する解決手段を得られやすいということになります。そういう人の脳回路は、より成長しやすいと言えます。

逆をいうと、自分の考えに固執したり、頑固だったり意固地だったりする人は、今まで自分が通っていた道を変えようとはしません。そうすると、新たな抜け道を見つける可能性が減ってしまいますし、見つけることができても通らないといってことになります。
年をとると頑固になってくるということが、高齢者の脳の成長にある意味影響を与えているのかもしれません。

もちろん、若い人でも、こだわりや思い込みが強い人は、同じように抜け道を見つけられる可能性は小さくなるのでしょう。

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