夏の危険生物、マダニ

マダニは、クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科の節足動物の総称を言います。
「ダニ」と聞くと、な~んだ! ふとんとかじゅうたんの上にいるイエダニみたいなものかと思ったら大間違いです。
マダニと家の中にいるイエダニは、全く別の生物と思ったほうが良いでしょう。

マダニは、イエダニと比べると非常に大きく、通常時であっても2mm~3mm程度の大きさがあるので、肉眼でもはっきりと確認することができます。

さらに、血を吸うと、どんどんとパンパンに膨れあがり、全長が1cmを超えるぐらい大きくなります。

マダニは通常は、山の中の茂みとか草むらで生活していますが、それに動物が触れると、触れた動物にくっついて移動します。
マダニは、宿主を見つけると、1週間以上にわたる吸血を行い、やがて宿主の体から外れます。そして再び別の宿主を探すということを繰り返しています。
マダニの血の吸い方

マダニはハーラー器官と呼ばれる感覚センサーをもっています。
これによって、動物の体温や振動、二酸化炭素や匂いを感知しています。
宿主にくっつくと、血が吸いやすい頭部や目・鼻・耳などの近くを選び、吸血を始めます。

まずは鋭い歯で咬みつき、ノコギリのような歯を皮膚の奥に差し込み、出血した血を吸い続けます。
この吸血時に、唾液からセメント様に固めて接合部を固定しますので、下手にはずそうとすると、吸血器官のみが皮膚の中に残ってしまい、そこから感染してしまう場合もあります。

マダニを媒介する野生動物

マダニは山の中や草むらに潜んでいますが、そういったところに行かなければ大丈夫というわけではありません。
野犬やキョンなどの野生動物、さらにはペットなどを経由して、人に移ってくるケースもあります。
公園で遊んでいたり、山登りをしている時、ちょっと草むらに入ったりして、そこで知らないうちに咬まれるといった場合もあります。

もし、マダニに咬まれてしまったら、自分でマダニを引き離そうとはせずに、皮膚科などの医療機関に行き、対処してもらうことが大切です。

自分でマダニをどうにかしたい場合

皮膚科で対応してもらうことが重要ですが、自己責任のもと自分でなんとかしたいといった場合は、アルコールやベンゼン、イソジン、虫除けなどが良いでしょう。

マダニをいじめて、居にくくさせる方法です。

アルコールなどを脱脂綿にしみこませてマダニにかぶせて放置すると、マダニにとっては不快でありおちおち人の血を吸っている場合ではなくなり、離れていってくれることがありますが、マダニを殺してしまわないように注意が必要です。

殺してしまうと、そのままマダニが体にくっついたまま、残ってしまいます。

あとは、線香の火でマダニのお尻に刺激を与える方法も有効ですが、やはりやりすぎてマダニを殺さないように注意が必要です。
こわいマダニの感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

マダニが媒介する感染症としてよく知られているのが、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)です。
SFTSウイルスというウイルスによる感染で、野生のマダニがウイルスを保有している率は5~15%程度と言われています。
症状としては、嘔吐、下痢、頭痛などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあるので注意が必要です。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に、インフルエンザ治療薬は効くのか?

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)と言えば、インフルエンザ治療薬「ファビピラビル」(商品名アビガン)がマウス実験ではあるが、有効であることが確認され、厚生労働省研究班チームが米国の微生物学会の専門誌に論文を発表しています。

長崎大と国立感染症研究所、愛媛大との共同研究で、マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に対して、インフルエンザ治療薬「ファビピラビル」(商品名アビガン)を用いた臨床研究が2016年7月からスタートすることが決まりました。

約30の病院で臨床試験が実施され、SFTSと診断された患者に10~14日間投与され、2016年内に25人を目標に効果などが調べられる予定です。

この薬が、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の治療薬の中心になっていくことが期待されています。

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