最近では、いろいろな病気になるリスクを診断する遺伝子検査というものが行われています。
がんや認知症、糖尿病などいろいろな病気を発症するリスクが、DNAを調べることで分かるというものです。


遺伝子検査をどうとらえるか


遺伝子検査は、DNAを知ることで、未来の健康的な生活が約束されるようなうたい文句で、診断サービスをアピールしているところもあります。
遺伝子検査で、どんなことがわかるかというと、がんやアルツハイマー病、糖尿病になるリスクはもちろんのこと、肥満になりやすさ、飲酒によって顔が赤くなりやすいかどうか、耳垢のやわらかさまで診断されてきます。


遺伝子検査で乳房を切除したハリウッド女優


遺伝子検査の結果を受けて、乳房を切除した大物ハリウッド女優は、アンジェリーナ・ジョリーさんです。
アンジェリーナ・ジョリーさんは、母親が卵巣癌で死亡であったことから、遺伝子検査を受けた結果、乳癌と卵巣癌の発生が高くなるとされる遺伝子「BRCA1」に変異があるとされ、「乳癌になる可能性の確率が87%」だと判定された。
これを受けて、乳癌予防のために両乳腺を切除する手術を受けています。


全米に広がっていったアンジェリーナ効果(The Angelina Effect)


つまり、実際には乳がんになっていないのにもかかわらず、予防的処置として両乳腺の切除手術を行ったのです。
予防のためとはいえ、女優という職業でありながら、乳房を切除するという決断もさることながら、それを堂々と公表したことから、その勇敢さに対し全米の賞賛が集まりました。この現象はアンジェリーナ効果(The Angelina Effect)とも言われています。


もちろん、黙っていると後々、尾ひれがついてゴシップやスキャンダルネタにされるリスクも考えてのことであろうが、それにしても大変な決断だったのでしょう。


日本でも波及するのか、アンジェリーナ効果


アンジェリーナ効果によって、BRCA 1/2遺伝子検査を受けたり、予防的乳房切除術を受けたりする女性が増えると予測されています。
果たして、日本ではどうかというと、遺伝子検査という観点からすると、だいぶ進歩してきています。
1万円程度だせば、いろいろな遺伝子検査が、唾液を郵送するだけで受けることができるようになっています。
もちろん、乳がんのリスクに対しても調べることができます。


しかし、問題はそのあとです。
米国では、BRCA1/2遺伝子検査に対して、ほとんどの保険が、乳癌発症年齢や乳癌・卵巣癌家族歴等でリスクの高さを判定した上で、保険給付を認めています。2010年にオバマケアと呼ばれる医療制度改革法において、高リスク患者に対するBRCA 1/2遺伝子検査・カウンセリングへの保険給付が義務づけられたのが大きな流れです。
日本の場合は、遺伝子検査は医療行為でもなんでもなく、単なる遺伝子検査であり、これに対しリスクが指摘された場合に、乳がんのリスクが高いからといって、手術を受けようとすると、乳がんという診断でもないかぎりは、保険適応が認められない。


遺伝子変異があった女性の予防切除の効果は


いろいろなデータがあるが、ここで一つのデータを紹介すると次のようになります。
BRCA1/2遺伝し変異があった女性483人に対して、乳房を切除しなかった場合、乳がんの発生率は48.7%、予防的に両乳房を切除した場合、乳がんの発生率は1.9%であった。
明らかに、発症リスクが90%以上減少していたことが示された。また両乳房切除したからといって、完全に発症しないとは言えません。





診断技術が進化しても、予防対策の充実が必要


診断技術が進化しても、予防についての保険適用などを充実させないと意味がありません。
こういう意味では、皆保険制度なんていうことをいいながら、日本は医療後進国といわざるを得ないでしょう。
少しは、オバマさんを見習ったらどうなんだろうか。


もちろん、日本でも、遺伝子検査によって乳がんのリスクがあった場合、予防的に乳房の切除手術を受けることは可能ですが、保険適用ではないので、全額自費負担となってしまいます。
日本で保険適用されないのは、科学的根拠を明確に示す研究がまだ十分でないというところでしょう。


TPPの影響で、日本の良き皆保険制度がくずれるといったことを心配する声もあります。たしかに皆保険制度は外国も羨むほどの良い制度ですが、全てにおいて優れているとはいえないでしょう。今後、どのようになっていくのか注目したいところです。



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